今後の株式の展望
有沢 正一 様
平成の30年間は、日本の株式市場にとって非常に厳しい時期となった。米国ダウ平均が11倍と大幅に上昇したのに対して日経平均は3割下落した。日本の企業がバブルの後始末に追われている間に、米国では今をときめくアマゾン、グーグル、アップルといった世界を大きく変えるような革新的な企業が次々と登場して株式市場をけん引した。ただ、日本の上場企業もバブル崩壊から、さらにリーマンショックを経て収益体質が強化されており、この10年間ほどは着実な利益の増加が続き、東証1部上場企業の利益総額は過去最高の水準に達している。今後は上場企業の堅調な業績を反映した株価の上昇が期待できるだろう。
昨年は米中貿易問題の影響もあって、中国の経済成長が鈍化したことなどで、世界景気の先行きに対する不安が高まり、年末にかけては米国始め世界の株式市場が急落して日経平均も暴落に見舞われた。しかし、年明け以降は米国や欧州の中央銀行が景気に配慮した緩和的な金融政策を進める姿勢を示したことが景気への不安を和らげ、米国株は再び上昇基調を強めて史上最高値の奪回に向かっている。この流れは、世界中の株式市場に広がっており、日本株もやがて力強い上昇歩調を取り戻すものと思われる。
昨年は中国の生産活動が停滞したことで中国向けの売上高が多い日本の機械や電子部品の企業の業績が急速に悪化して株式市場の足を引っ張ったが、中国景気も昨年秋から年末が最悪期で足もとでは回復の兆しが見られている。米中貿易問題も6月のG20までには何らかの落ち着き処を見出しそうだ。今期の上場企業の利益は1割程度の増益が予想されており、業績の回復を映した株価上昇が期待できるだろう。消費増税の影響を懸念する向きもあるが、前回増税時の反省を生かした手厚い景気対策が景気を下支えすると思われる。改元や東京五輪開催といった投資家心理を盛り上げるようなイベントも株式市場の追い風になりそうだ。
さらに、経済が成熟した日本においても社会を変えるような技術革新が経済に新たな付加価値を生み出すことになる。その代表例が、来春から商用サービスが本格化する「5G」で、2025年に全世界で約1,300兆円の経済効果を生み出すと言われており、その恩恵は多くの日本企業も受けることになる。キャッシュレス化の加速や顔認証システムの普及などが新たなビジネスチャンスになる企業も多いだろう。そして少し先の話にはなるが、IR(カジノ)開場、万博開催が大阪、関西企業のビジネスチャンスを拡大させることになる。このようなイベントに関連する企業は成長の可能性が大きく、株式投資の対象としても中長期的な妙味が大きいと思われる。