戦略的辺疆に対峙する海洋国家日本
三木 基実 様
日本と一衣帯水の中華人民共和国(以下「中国」)の外交基本方針の変遷は、極めて影響の大きいものであり、海上保安業務もそれにより大きく影響されています。中国のそれは、鄧小平国家主席の「韜光養海 有所作為」に始まり、韜海路線は継続しつつも、「有所作為」に力点を徐々に置き「言わなければならないことは積極的に言うべき」とのスタンスに変わり、平成24年「中華民族の偉大な復興の実現」を掲げた習近平国家主席により、平成21戴秉国 国務委員(副首相級)が唱えた「核心的利益」の一項目である「国家主権・領土保全・国家統一(台湾、チベット、東トルキスタン〔新疆ウイグル〕、後に南シナ海、東シナ海〔尖閣諸島〕」を最前面に掲げています。国防白書による積極的防衛戦略「現状を変更しても、守るべきものは守る」により、南沙諸島埋め立て問題等も起こっています。一帯一路(新シルクロード構想+海のシルクロード構想)は「中華民族の偉大な復興の実現」に根ざすものであり、基本方針①主権を堅持する毅然とした姿勢を貫く②責任ある大国として振る舞う③新たな国際秩序の構築へのチャレンジから、「戦略的辺彊(辺境)」と呼ばれています。
他方、海上保安業務は、「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため・・(海上保安庁法)」と規定され、「海上保安の日祝賀会」(5.14)に安倍総理が参加され、「最も重要なことは、法が支配する海洋秩序を構築し維持することです。・・海上保安庁の活動なくして自由で開かれたインド・太平洋の実現はありません。」と訓示されました。領海警備については、平成24年9月11日、海上保安庁にて、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島の三島を取得し、保有したのを契機に、中国公船の継続的徘徊、領海侵入を繰り返していますが、平成20年12月に既に中国海監2隻が領海侵入していることから、三島取得・保有は単なる口実であったと思われます。
中国は、平成24年11月に、中国海洋戦略~「海洋強国」への道を提唱しましたが、「海洋強国」とは、「海洋資源の開発(経済発展)」と「海洋権益の保全(安全保障)」であり、中国の管轄海域(領海・EEZ・大陸棚)拡大路線 〔戦略的辺彊〕 は続くことは自明の理です。この状況下における今後の日本の取るべきスタンス等についてお話したいと思っております。