卓話の世界

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卓話 2021年12月2日

新時代の肺がん診療

 大阪府済生会吹田病院 呼吸器内科 科長 岡田あすか 様

 肺は呼吸を司る臓器であり、酸素と二酸化炭素の交換のため非常に多くの血管が集まっています。そのため、肺がんは他のがんに比べても転移しやすいがんと言われており、罹患者数・死亡数ともにがんの中でも上位を占めています。肺がんは肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したもので、遺伝子の異常によりがん化した細胞が異常に増殖することで起こります。喫煙がリスク因子ですが、非喫煙者にも起こり早期の段階では症状が出にくいため、定期的な検診が望まれます。

 診断のためには大きく画像検査と組織検査が必要ですが、それらの結果から得られたがんのタイプや進行度、また患者さんの状態を踏まえて治療方針を決定します。治療は大きく手術・放射線・抗がん剤・免疫療法の4つに分けられますが、今回は特に薬物療法(化学療法・免疫療法)に関して、実際の症例を交えながらご説明します。化学療法には、従来からのいわゆる抗がん剤の他、特定の遺伝子を標的として治療を行う分子標的薬というお薬もあり、個別化医療の中心的役割を担っております。

 免疫療法としましては、近年免疫チェックポイント阻害薬という薬剤が新たに登場しました。本庶先生がノーベル賞を受賞されたことは記憶に新しいかと存じますが、この際開発された薬剤です。登場から6年経った現在では複数の免疫チェックポイント阻害剤が使用できるようになっており、肺がんを中心とした多くのがんにおいて、治療の中心的な立場を確立しております。

 肺がんの薬物療法は近年飛躍的に進歩を遂げており、進行期でもがんとうまく付き合いながら、長期に治療を継続できている方もおられます。しかしながら、少しでも早期に診断・治療を開始することが重要ですので、気になる症状がありましたら早めに一度受診ください。

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